- 2025-1-17
- ENTERTAINMENT
現代フランス映画界を代表する監督アルノー・デプレシャンの最新作『映画を愛する君へ』(配給:アンプラグド)が、1月31日(金)より新宿シネマカリテほかにて全国順次公開。この度、著名人からの推奨コメントおよび冒頭映像が解禁された。
本作は、19世紀末に誕生してから現在に至るまでの映画の魅力と魔法を語り尽くす、映画への深い愛と映画館への賛美に満ち溢れたシネマ・エッセイ。デプレシャン監督は、『キングス&クイーン』(04)や『クリスマス・ストーリー』(08)などで、数々の映画賞にノミネートされ、日本の映画ファンからも人気高い名匠。本作も、第77回カンヌ国際映画祭で特別上映され、最優秀ドキュメンタリー賞にあたるゴールデン・アイ賞にノミネートされた。映画ファンから絶賛の声が上がった話題作。デプレシャン監督の過去作『そして僕は恋をする』(96)や『あの頃エッフェル塔の下で』(15)でマチュー・アマルリックが演じる主人公ポール・デダリュスに、監督自身を投影した自伝的映画になっている。初めて映画館を訪れた幼少期、映画部で上映会を企画した学生時代、評論家から映画監督への転身を決意した成人期を、映画史と共に描く。マチュー・アマルリックは本人役として出演。祖母役をジャン・ユスターシュ監督の傑作『ママと娼婦』(73)で知られるフランソワーズ・ルブランが、14歳のポール役を『落下の解剖学』(23)の視覚障害のある息子役で注目を浴びたミロ・マシャド・グラネールが演じている。
本編には、映画史に功績を残した50本以上の名作が登場。リュミエール兄弟による映画の発明から、アベル・ガンスの『ナポレオン』(27)、フランク・キャプラ『或る夜の出来事』(34)、アルフレッド・ヒッチコック『北北西に進路を取れ』(59)、黒澤明『乱』(85)、クロード・ランズマン『SHOAHショア』(85)、ジェームズ・キャメロン『ターミネーター2』(91)、『ノッティングヒルの恋人』(99)など、世界中の様々なジャンルの映画が洪水のようにスクリーンを駆け巡る。そのほか、フランソワ・トリュフォー、ジャン=リュック・ゴダール、イングマール・ベルイマンらの映画も登場。デプレシャン監督が尊敬するアメリカの哲学者スタンリー・カヴェルやフランスの批評家アンドレ・バザンの言葉も借りながら、“映画とは何か”に迫る。
さらに、ドラマとドキュメンタリーを融合したハイブリッドな構成で綴られる。フィクションのシーンには、一般の観客が映画体験エピソードを語るインタビューシーンが挟まれる。「本作の主題は“私たち”映画の観客」と監督が語るように、観客の視点で映画愛が描かれる。シネ・ヌーヴォ(大阪)や東京日仏学院エスパス・イマージュ(東京)など、日本の映画館の登場も見逃せない。映画は私たちの人生にどれほどの影響をもたらすのか——。デプレシャン監督が贈る映画と映画館へのラブレターを、ぜひ映画館で受け取って欲しい。
■コメント一覧(五十音順・敬称略)
伊藤さとり(映画パーソナリティ・映画評論家)
初めて映画へしっかりと意識を向けた日のことは忘れない。
『風と共に去りぬ』のラスト、「ここで“明日には明日の風が吹く”って言うの」と母が言った。
詩的なセリフを映画から知った。
観たこともない地を映画から知った。
恋の感覚を映画から知った。
感情を音楽で綴ることを映画から知った。
そんな懐かしい記憶がこの映画から名作と共に蘇ってきた。
影響を受けた映画:『シンデレラ』(76)、『第三の男』(49)、『カサブランカ』(42)
川口敦子(映画評論家)
映画への、映画をみることへの、愛をめぐるデプレシャンのシネマ・エッセイは、監督自身の“私の映画史”でもあり、あるいはまた例の“マドレーヌの欠片”のように映画に向かう私たち観客個々の記憶の喚起装置ともなっていく。
いくつもの形式を溌剌と健やかな野心に満ちて束ねあわせる多面体の宇宙、その大きさ、奥行、親密さを噛みしめたい!
影響を受けた映画:『秋刀魚の味』(62)、『あいつばかりが何故もてる』(62)
小島秀夫(ゲームクリエイター)
映画の歴史と共に、アルノー・デプレシャン監督の“映画愛”が語られる。
“映画好き”は、誰もが共感し、涙するだろう。そこで語られる映画たちと、自分の映画体験と記憶に。
一方、YouTubeやサブスク世代は、全く別の感想を抱くはずだ。本作は、“映画愛”を試す“リトマス試験紙”だ。
あなたはどうだろう?試してみるがいい。自分の“映画愛”を。
影響を受けた映画:『顔のない眼』(60)
佐津川愛美(女優)
難しいことは抜きにして「映画館で映画を観ることが好き」という私の事実を肯定してもらえたようでした。
今まで自分が観て来た作品から受け取った感情が愛おしくなると同時に、あとどれだけの未知の気持ちを教えてもらえるのだろう、どんな映画と出会えるのだろうとスクリーンの前で静かに心震えました。
少年の瞳に映る映画というものに、計り知れない魅力が詰まっている奇跡に大きな拍手を。
影響を受けた映画:『耳をすませば』(95)
竹中直人
なんてロマンチック!映画がまだフィルムだった時代の壮大なロマンに酔いしれる!スクリーンに映し出された映画スターと映画監督たち!【映画】と言う極上の夢に、こころが静かに踊り、柔らかく震えた。
影響を受けた映画:『鉄道員』(56)、『刑事』(59)、『007/ドクター・ノオ』(62)、『007/危機一発』(63)
樋口尚文(映画評論家・映画監督)
トム・ウェイツ『Ruby’s Arm』(ゴダール『カルメンという名の女』だよ)に痺れながら『ターミネーター』にもドキドキしてた私にはシンクロ率100%の包容力に満ちたシネフィル断章。
映画と映画館になぜかくも魅せられるのか?その答えがここにある!
影響を受けた映画:『戦場のメリークリスマス』(83)
深田晃司(映画監督)
歴史とは個の思いの集積であること、アルノー・デプレシャン監督しかり、この映画に映るひとりひとり、そして客席でスクリーンを見つめるすべての人が映画史の担い手であることを突きつけてくる。歪つまでの熱量で挿入されるのが『SHOAH』であるのは偶然ではないのだろう。映画とは何か、歴史とは何か、現実とは? そんな映画だったと思います。
影響を受けた映画:『天空の城ラピュタ』(86)
宮代大嗣(映画批評)
デプレシャンの最高傑作!『映画を愛する君へ』は、映画館の暗闇に身を沈め、スクリーンの光と影に恋をすることが“旅”によく似ていることを思い出させてくれる。そして劇場の幕が下りたとき、私たち自身の旅が始まる。デプレシャンは誰に対しても分け隔てなく座席を用意している。ここがあなたの席だと。あなただけのために用意された席だと。ここからあなたの人生の旅が、再び、何度でも、始まるのだと。
影響を受けた映画:『バットマン』(89)
山崎まどか(コラムニスト)
自分が子供や若いときに映画館で観た映画、家族が集まるリビングのテレビで流れていた映画、誰かと映画を観に行った帰りにカフェやバーで語り合ったこと。デプレシャンの個人的な映画史に呼応して、スクリーンの記憶と共に追憶が押し寄せてくる。
なんて豊かな映像体験なんだろう。
影響を受けた映画:『ダウンタウン物語』(76)
リム・カーワイ(映画監督)
孤高の巨匠ベルイマン、ドライヤー、ブレッソン等の映画から、ホロコーストをテーマとした9時間27分の『SHOAH ショア』を情熱的に語り、ラブコメ『ノッティングヒルの恋人』やSFアクション『ターミネーター2』、『エイリアン2』などエンタメ作品に至るまで映画愛を隠さず告白する。
これは間違いなく、自分の映画人生を振り返ったデプレシャン監督が映画を愛する君への入魂のラブレターだ。
そして映画館で少しでもあの神秘的な美しい体験に触れた人は、きっとこの映画を一生の宝にするだろう。
影響を受けた映画:マイケル・ホイ、ジャッキー・チェン、映画会社ショウ・ブラザーズのカンフー映画、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)
『映画を愛する君へ』
1月31日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
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