「夢を追い続けるのではなく、クレイジーと言われるぐらいやり続けること」スコセッシ監督、学生たちにメッセージ

最新作『ヒューゴの不思議な発明』のプロモーションで来日したマーティン・スコセッシ監督。記者会見では、ご自身の子ども時代の話から映画作りで大事にしていることまで詳しく話してくれ、映画愛あふれるトークと69歳とは思えないお元気ぶりに感動。金曜夜には、映画業界を志す学生たちからの質問に巨匠自らが答える「スコセッシ監督の1夜限りの白熱教室」というステキなイベントが行われました!!
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▲学生さんたちと笑顔の監督。左のパネルには直筆サイン
拍手で迎えられた監督は笑顔で「サンキュー、サンキュー」と答え、とっても気さくな雰囲気。「今日はみなさんと会うことが出来てうれしい。みなさんの質問にできる限り満足してもらえるよう、答えられるといいなと思ってます」とまずはご挨拶。


すぐに質疑応答に入ったのですが、『ディパーテッド』でアカデミー賞を受賞し、『ヒューゴの不思議な発明』は11部門にノミネートされているスコセッシ監督。最初に代表質問で「やはりアカデミー賞を受賞すると周囲の反応は変わりますか?」と聞かれると、
「常に自分としては成功と思える作品を作るよう心がけているんですが、1975年頃に自分はアカデミー賞をとることはないだろうなと思ったんです。ですから『ディパーテッド』でオスカーを受賞したとき、これはひとつの映画に対してではなく、これまでの作品に対するものだと思いました。受賞後は、自分がどういうものを作りたいかと考えるとき、ハリウッドのスタジオが望むなかで、自分がなにか出来るものであるかということを考えるようになりましたね。しかしその状況も2008年の景気の変動によって変わりましたが。『ディパーテッド』は撮影もとてもクレイジーだったんで、撮影後はローリング・ストーンズのコンサート映画をとって心を解放したほど。なので多くの批評家やアカデミーから受け入れられたことは驚きでした。タイミングやハリウッドのムードに影響されたのでしょう」と回答。
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▲学生さん作成の横断幕を見て大喜びの監督。
その後、学生さんたちからの質問。
Q 作品中のメリウスが監督のように見えてきたが、その点は意識しましたか?
スコ:特にその点は意識していません。原作を読んだ妻、プロデューサーからとてもあなたに似ているといわれたのですが、私はそんなに鏡を見るタイプではありませんから(笑)。自分としては少年のほうに似ているかなと思ってます。しかし、偉大なフィルムメーカーの多くは存命中は認められなかったり、人気がでてもその後忘れられてしまったり。私自身も1970年代と1990年始めにカムバック的なことを経験しているので、メリエスの悲劇は理解できます。彼が駅舎の中にいて、少年にではないけれども発見されたというのは、実際あったことなのです。
Q スコセッシ監督を超える映画監督を作る3つの方法は?
スコ:むずかしい質問ですね。私は自分のことしか話せないけれど、私は絵が動くということに3歳から夢中でした。そして1962年頃から映画を作り始めたのですが、当時アメリカでインディペンデント映画に対する注目が集まっていたのはラッキーだったと思います。その後、状況はどんどん変わってきていますが、そのなかで唯一言えることは、映画をはじめいろいろな媒体がありますが、自分の媒体への情熱が大切。映画は今、変化していますが、困難があっても自己表現をするための情熱を持ち続けることです。よく決意をもってやりつづける、夢を追い続けるという言い方がありますが、そんなありきたりなことではなく、クレイジーだと言われるくらいにやらなくてはいけない、もうそれ以外はやりたくない、やらないというくらいの決意です。
Q 想像力あふれる作品を作る源は?
スコ:3歳の頃、私はひどいぜんそくで運動もできず大笑いも禁じられて、動物も植物も近寄れない状況でした。なので、身の回りのことを観察したり、あれこれ頭の中で想像をめぐらしていたんです。そうするうち、身の回りに起きることがドラマチックだと思ったんです。その頃、父親が「実際の真実はこうだけど、これでは映画にはならないね」と言ったことがあり、自分は「映画にできたらどうする?」と答え、後に映画にすることができました。イマジネーションというのは、自分のなかにあるもの。なので、自分は毎回、子どもの頃のイマジネーションにもどるんです。それがギャグスターものであっても子どもの頃考えていたことに戻って、興奮して、文句をいいながら映画を作る。次回作に望む際は、前と違うことをしたい、よりシンプルに力強く描けるのでは、などと考えながら取り組みます。常に、狙いや希望があります。それは砂漠の蜃気楼のように、到達できたと思っても消えてしまい、また遠くに見える、その繰り返しです。
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Q 映画には普遍的なメッセージを込めていますか、その時代のトピックを取り入れていますか? 
スコ:いい質問ですね。私は作品のストーリーに関して、その時々のトピック的なものに興味を持ったことはありません。作っているときは気づかなくても、後から考えると、常に人間の基本的なこと、信頼と裏切り、罪と責任といったことを描こうとしているのかなと思います。それはすべての人間に共通していると思うし、将来もそうあって欲しいと思っています。私は69年生きてきて、いろいろな変化を経験していますが、人間というのはかわりないですから。
と、約30分にわたり一つひとつの質問に丁寧に答えてくれたスコセッシ監督。「今回の映画は映画が発明された時代が背景で、当時は産業革命の時代でもあり、人々はユートピアを期待しました。今は、いろいろ新しい技術が登場している点では同じような時代だと思います。そういった新しい技術を使って物語を描くことができる。映画はいろいろな表現方法で作られるようになるでしょう。しかし、観客が大勢で一緒に映画を体験したいという思いはなくならないと思います。皆さんには素晴らしい環境となるでしょう。何か新しいことをして欲しいですね」と最後にメッセージを送っていました。
映画好きな男の子がそのままおじいちゃまになったという感じのスコセッシ監督。『ヒューゴの不思議な発明』はもちろん、アカデミー賞授賞式も楽しみです!!
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『ヒューゴの不思議な発明』
3/1(木/映画の日) TOHOシネマズ 有楽座他、全国ロードショー!(3D/2D同時公開)
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
公式サイト

(makiko)

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