永遠の名作『天国の日々 4K』4.4(金)より全国順次公開!贅沢本編映像&解説コメントが解禁

4月4日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開される映画『天国の日々 4K』の本編映像と解説コメント2点が解禁。

この度解禁されたのは、映画音楽の名匠エンニオ・モリコーネが手掛けた幽玄な音楽と共に、絵画のような美しい映像が次々と画面を駆け巡る贅沢な本編映像。撮影監督のネストール・アルメンドロスは、ヨハネス・フェルメールやエドワード・ホッパーからインスピレーションを受け、本作の雰囲気を作り上げている。また、本編の大半を占める夕暮れ時のシーンは、“マジックアワー”と呼ばれる1日にわずか20分しかない日没間近の時間帯で撮影するという極めて異例の方法で行われ、撮影スタッフとアルメンドロスは対立が絶えなかったという。この類を見ない徹底したやり方で、本作の映像世界を確立させ、アルメンドロスは第51回アカデミー賞 撮影賞を受賞した。

今や映画音楽界の名だたるマエストロとして不動の地位を確立させたモリコーネは、生涯にわたってアカデミー賞に計6回ノミネート。そのキャリアの中で、最初にノミネートされたのが本作である。

前述の“マジックアワー”について実態をまだ知らない方のために、気象予報士、防災士の佐々木恭子氏より、マジックアワーの解説コメントが寄せられた。「物語の心情に寄り添う光へのこだわりが十分に感じられる作品です」と本作を絶賛。

さらに、写真家の吉村和敏氏からは、マジックアワーでの撮影の困難さについて言及したコメントが到着。「『天国の日々』は、物語以上に、映像そのものが語る力を持っている。マジックアワーの色彩の輝きや雰囲気を巧みに伝える映像美を目にするだけでも、本作を観る価値は十分にあるだろう」と、『天国の日々』がもたらす映像の価値について触れた。
これらの予備知識を入れてから鑑賞することで、本作の凄みがより感じられるはずだ。全文は下記の通り。

佐々木恭子(気象予報士、防災士、合同会社てんコロ.)
昼と夜の狭間に見られる空の光は、淡い金色から紫、群青と短い時間で変化していきます。中でも、日の出直前と日の入り直後の、特に美しいグラデーションの空に出会えるのがマジックアワーです。マジックアワーの光はとても柔らかいため、この時間の自然光での撮影となると、当時の技術ではまさにその20分間程度が勝負だったのだろうということを窺い知ることができます。物語の心情に寄り添う光へのこだわりが十分に感じられる作品です。

■吉村和敏(写真家)
『天国の日々』は、その映像美で観る者を圧倒する。特に、マジックアワーの時間帯に撮影されたシーンは、息をのむほど美しい。空はオレンジや紫の仄かな光を宿し、麦畑は柔らかな風に揺れ、その場の空気や匂いまでも感じられるようだ。
しかし、マジックアワーの撮影は決して容易ではない。
照度が極端に低いため、明るい空に露出が引っ張られ、地上の対象物はすべてシルエットになってしまう。そんな厳しい条件の中で、露出を巧みにコントロールし、淡い自然光を最大限に活かしながら、麦畑や人物のディテールを緻密に描き出している点は、見事としか言いようがない。撮影技術の高さも、この映画の大きな魅力の一つになっている。「眠ると夢の中で麦畑が話しかけてきた」という少女の言葉は、映像が持つ魔法を象徴しているのかもしれない。
『天国の日々』は、物語以上に、映像そのものが語る力を持っている。マジックアワーの色彩の輝きや雰囲気を巧みに伝える映像美を目にするだけでも、本作を観る価値は十分にあるだろう。

【作品概要】
『天国の日々 4K』は、20世紀初頭のテキサスの壮大な農場を舞台に、人間の弱さともろさを美しい映像で描く。第32回カンヌ国際映画祭で監督賞、さらに第51回アカデミー賞🄬では撮影賞を受賞するなど、公開当初から世界中で高く評価され続けている珠玉の名作。日本では、約5年後の1983年に劇場公開された。
監督は、『バッドランズ(地獄の逃避行)』(73)で初メガホンをとり、『シン・レッド・ライン』(98)や『ツリー・オブ・ライフ』(11)などで数々の賞を受賞し続けているテレンス・マリック監督。この作品に全てを注いだマリック監督は、次回作の『シン・レッド・ライン』までの20年間、1本も映画を撮らなかったことは、長年にわたり映画界の伝説として語られている。
本編の夕暮れ時のシーンは全て、“マジックアワー”と呼ばれる、1日にわずか20分しかない日没間近の柔らかい光の中で撮られ、本編のほとんどをこの時間に費やすという極めて異例の方法で撮影された。手がけたのはエリック・ロメール監督作品に多数参画し、フランソワ・トリュフォーらヌーヴェル・ヴァーグの作品でも撮影監督をつとめたネストール・アルメンドロス。
この2人の狙い通り、絵画のような非常に美しい画作りに成功したが、その極度なこだわりのため、スケジュールや予算は大幅に超過。プロデューサーのバート・シュナイダーは自宅を抵当に入れたという。アルメンドロスは、次回作が控えていたため、ハスケル・ウェクスラーに撮影監督を引き継ぎ完成させた執念の一作となった。
本作は、テレンス・マリック監督監修のもと4Kレストア化。ここ数年の間で劇場公開が急増した4Kと、これまでの2K素材の違いについて、国立映画アーカイブの主任研究員、岡田秀則氏は「画面の肌理が違う。デジタルスキャンによる解像度は、4Kでようやく化学分子からなる35mmフィルムのレベルに達する」と言及。加えて、従来のフィルム映写機とDCP(現在主に使用されるデジタル上映素材)の違いについては「劇場の暗い環境で鑑賞することで、グラデーションの違いがよく分かる」と解説している。
画面の中にある繊細さを遺憾なく発揮し、逆光を巧みに扱うことで “ヨーロッパの光”をアメリカ映画に持ち込んだとされるアルメンドロス。本作の魅力が一番発揮されるのは、設備が整った劇場のみ。当時、劇場で観た方も、配信等で知った若い世代も、新しく生まれ変わった『天国の日々 4K』を、ぜひ劇場で体感して欲しい。

『天国の日々 4K』
4月4日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
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