- 2015-7-19
- NEWS
人生において、決して押してはならないスイッチを押してしまったがために、不運の連鎖に巻き込まれる6人の男女の落ちざまをまったく新しい手法でユーモアたっぷりに描いたブラック・コメディ、映画『人生スイッチ』。7月25日からの公開に先がけ、アルゼンチンのイケメン監督、ダミアン・ジフロンのインタビューをご紹介。
©2014Kramer & Sigman Films / El Deseo
▲ダミアン・ジフロン監督。
映画『人生スイッチ』(英題:Wild Tales)は、第87回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたほか、第67回カンヌ国際映画祭コンペティション部門にも正式出品され、そのあまりにも斬新な面白さで話題をさらい、本国アルゼンチンでは公開するやいなや『アナと雪の女王』の2倍以上の興行収入を記録した、アルゼンチン史上最大のヒット作。
製作は『オール・アバウト・マイ・マザー』でアカデミー賞外国語映画賞とカンヌ国際映画祭監督賞に輝き、『トーク・トゥ・ハー』でアカデミー賞脚本賞を受賞、監督賞ノミネートも果たした名匠ペドロ・アルモドバル。アルゼンチンで注目されていた、ダミアン・ジフロン監督の過去作を観てその才能に惚れ込み、自らプロデューサーに名乗り出ました。
Q:この作品のアイデアはどこから?
ジフロン監督:他の脚本に着手していた時にこの脚本を書いた。初めはこれらの話をどうすればいいかわからなかったけど、4-5作出来てきたところで、これらの作品が同じDNAから来たものだと気付いた。ひとつひとつの話がひとつの星座の中の星たちのようにテーマとしてリンクしていると気付いたんだ。そして、「人生スイッチ」という名前に思い当った時、それが必要なものだったと感じたんだ。
Q:怒りや感情の暴走に身を委ねることを喜びと表現されてますね?
ジフロン監督:人生において、逮捕されたり死にたくなければ自分自身を抑制しなくてはならない時がある。だから、喧嘩したくても出来ないときもあるんだ。でも、抑制していることの代償も大きい。生きていた方がいいけど、あれを言えばよかった、こうすればよかった、と過去を思い悩むことになる。芸術や脚本の中では抑制する必要なんてない。最後の最後まで突き進んで、その経験を変換して観客に見せればいいんだ。血や苦悩が見えても、観客は大いに笑ってくれると思うよ。抑制するのではなく、反抗することの楽しさや欲求を理解できるだろうから。
Q:脚本執筆の苦労は?
ジフロン監督:商業的にというだけではなく、芸術的にも、同じような映画で成功した例がないことがひとつ問題だったと言えるかな。こういうオムニバス作品ではお客が呼べないと業界が思っているなかで、自信を持ち続けることは困難だった。でも、偉大なプロデューサーに素晴らしいキャストとクルーも皆脚本を信じてくれた。オムニバスがうまくいかない理由のひとつは、エピソードごとに監督が違って、制作プロセスのなかで話がうまくつながっていないからだと思うんだ。すべてのエネルギーをコントロールする人間がひとりだったら、成功の確率は高くなるんじゃないかな。
Q:アカデミー賞外国映画賞ノミネートの感想は?
ジフロン監督:ものすごいことだよ。子供のころからアカデミー賞をずっと見てきたんだ。誰かを倒すために映画を作っているんじゃない。誰かと対抗するためのものじゃないんだ。自分のやりたいことをやって、他の監督もやりたいようにやって、それで他の人たちと同じ賞を争う。これはとてつもない名誉だし、この作品がノミネートされたのはラッキーだったと感じてる。自分が愛する作品を作った業界の人たち、自分が尊敬する人たちがノミネートしてくれたんだからね。自分の好きな作品10本の内9本はアメリカで作られたものなんだ。その映画を作ってる人たちを紹介してもらって、その人たちが自分の作品をノミネートしてくれたなんて誇りに思うよ。
©2014Kramer & Sigman Films / El Deseo
Q:各作品の順番はどうやって決めた?
ジフロン監督:書いた順番になってるんだ。その順番を守ろうと思ったわけじゃなくて、他の順番も考えたんだけど、最終的にはこの順番にしたんだ。カンヌでこの作品を試写した時に、このままがいいと気付いたんだ。発展性があるし、バリエーションにも富んでいる。オープニングの飛行機のシーンは1話目にしか考えられない。最終話にはなりえない。結婚式のエピソードは1-2人の出演者があんなに変化して元の鞘に収まる、そんな話は最終話にしか成りえない。
Q:アルマドバル兄弟との出会いは?
ジフロン監督:ペドロ・アルモドバル、オーグスティン・アルモドバル、エスター・ガルシアが2006年に僕が作った映画「On Probation」を見てくれていたんだ。このアルゼンチン映画を映画館に観に行ってくれて、この作品をとても気に入ってくれたようなんだ。その後、オーグスティンがアルゼンチンに来た時に一緒にディナーに行ったんだ。彼は僕が次にどんなものを作ろうとしているのか聞いてきて、彼とペドロがプロデューサーになりたいと言ってくれたんだ。もちろんとてもありがたいし、幸せだったよ。制作の面から言えば、ペドロは自分の会社を持っているし、好きな時に好きなものを撮れる。彼はアーティストにとって最も大事なことは自由であることだと本当に信じている。だから、彼がプロデューサーになる時には、その作品の監督のために同じ環境を作ってくれる。彼は「脚本は素晴らしかった。ひとつのコンマすら変えずに作るんだ。君以上にこの話をよく撮れる人なんていないんだから、やるべきことをやるんだ」と言った。彼は世界的に有名なアーティストなのに、作品がカンヌ映画祭に出品されると、たくさんの取材を受けてくれた。サンセバスチャンにも一緒に来てくれた。この作品に関して話すために、何カ国にも来てくれた。彼はこの作品の偉大なるゴッドファーザーのようなものだ。
『人生スイッチ』
7/25(土)ヒューマントラスト有楽町、シネマライズ 他 全国順次公開!
配給:ギャガ
公式サイト