- 2024-3-13
- ENTERTAINMENT
- バティモン5 望まれざる者
パリ郊外(=バンリュー※1)。ここに⽴ち並ぶいくつもの団地には労働者階級の移⺠家族たちが多く暮らしているが、このエリアの⼀画=バティモン5 では再開発のために⽼朽化が進んだ団地の取り壊し計画が進⾏している。
そんな中、前任者の急逝で臨時市⻑となったピエールは、⾃⾝の信念のもと、バティモン5の復興と治安を改善する政策の強⾏を決意。だがその横暴なやり⽅に住⺠たちは猛反発、やがて、これまで移⺠たちに寄り添い、ケアスタッフとして⻑年働いていたアビーたちを中⼼とした住⺠側と、市⻑を中⼼とした⾏政側が、ある事件をきっかけについに衝突! やがて激しい抗争へと発展していく――。
予告は、今年の夏季五輪開催地でもあり、世界が憧れてやまない憧れの都市・パリ、そのリアルな<怒り>を捉えたもの。多くの移⺠たちが暮らす犯罪多発地区の⼀画“バティモン5“。臨時市⻑に就任したピエールは、再開発を⾔い訳にこの“乱れた“地区を強制的に⼀掃しようとする。「声を上げなきゃ」「批判ばかりで何もしないのね?」―⾏政の横暴なやり⽅に対して住⺠同⼠でも葛藤や諦めムードがせめぎ合うが、そんな切実な声はお構いなしに<法の執⾏>の名の下、あらゆる⼿段で全てを思い通りに動かそうとする⾏政。やがて、住む場所を失った住⺠たちは、このあまりにも横暴な⽴ち退き要求に対し、徹底抗戦することを決意―「全てを失う苦しみを知れ!」住⺠たちの怒りと⾏政が衝突することになる。「フランスは好きですか?」このシンプルな問いかけが、権⼒、⾰新、暴⼒があらゆる不都合な真実を炙り出していくような映像となっています。
ポスターは、バンリュー地区の古いアパートが爆破解体される瞬間を切り取ったもの。市⻑ら⾏政関係者と多くの住⼈、野次⾺が⾒守る中爆炎を上げながら⼀瞬で崩れ落ちていくその様⼦は、⼈と権⼒の⾝勝⼿さの縮図を象徴するような印象的なカットとなっている。
監督は、前作『レ・ミゼラブル』でその名を⼀躍世界に轟かせた、新鋭ラジ・リ。役者として、また、1994 年にアーティスト集団クルトラジュメのメンバーとしてキャリアをスタートした彼は、1997 年、初の短編映画『Montfermeil Les Bosquets(原題)』を監督、2004年にはドキュメンタリー『28 Millimeters(原題)』の脚本を、クリシー、モンフェルメイユ、パリの街の壁に巨⼤な写真を貼ったことで有名になった写真家JR(ジェイアール)と共同で⼿がけるなど、今、注⽬を集める新進気鋭のアートティストの1⼈でもある。2022年にはパリ郊外のスラム地区での暴動を映し出したNetflix映画『アテナ』の製作・脚本を⼿がけ話題を呼んだ。
前作『レ・ミゼラブル』では、⾃⾝が⽣まれ育ったパリ郊外の犯罪多発地区モンフェルメイユを舞台に、そのエリアを取り締まる犯罪防⽌班(BAC)と少年たちの対⽴を、⼿に汗握る圧倒的な臨場感で描き出し、観るものの⼼を鷲掴みに︕結果、作品は、第72 回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞、第45 回セザール賞4 冠最多受賞(観客賞、最優秀作品賞、有望男優賞、編集賞)、第92 回アカデミー賞.国際⻑編映画賞ノミネート、第77 回ゴールデングローブ賞外国語映画賞ノミネートなど各国の映画賞を総なめにし、世界に衝撃を与えることになった。
それから4 年。ラジ・リ監督のもとに『レ・ミゼラブル』製作スタッフが再集結し、再びバンリューが抱える問題を持ち前の臨場感に新しい視点を交えて⽣み出したのが本作『バティモン5 望まれざる者』だ。前作と地繋がりのテーマを採⽤しつつも、そのドラマはより⼈間臭さを帯びながらさらに社会性をまとい、観るものを圧倒する⼒強さで進化した作品となっている。
移⺠たちの居住団地群の⼀画=バティモン5の⼀掃を⽬論む「⾏政」とそれに反発する「住⼈」による、“排除” vs “怒り”の衝突。本作では、恐れと不満の積み重ねが徐々に両者間の溝を深くし、憎しみのボルテージが加速していく様が息もつかせぬ緊迫感で描かれる。このコミュニティ内にある「権⼒」「⾰新」「暴⼒」の3つの視点を交錯させることでバンリュー地区の実態、ひいては花の都パリの知られざる“暗部”を炙り出していく。この街で不都合なものとは⼀体何なのか、望まれざる存在とは何を指すのか――その真髄を映し出した本作は、まさにラジ・リ監督の真⾻頂と⾔えるだろう。2024 年夏季五輪を控えて盛り上がりを⾒せるパリ。世界的な注⽬を集める⼤都市が⼈知れず抱え続ける問題を、サスペンスフルかつエモーショナルにクローズアップした衝撃作がここに誕⽣しました。
さらに、「横浜フランス映画祭2024」(3⽉20⽇〜24⽇)での上映が決定し、ラジ・リ監督の来⽇も予定している。
★本作の前売り券は、3/15(⾦)よりムビチケオンライン、特別鑑賞券(共に1,600円税込)を発売予定。
<※1:フランス語で郊外を意味する banlieue(バンリュー)は「排除された者たちの地帯」との語源をもつ。19 世紀より労働者の街として発展し、戦後は住宅難を解消する⽬的で⼤量の団地が建設された。団地⼈気が低下する1960 年代末より旧植⺠地出⾝の移⺠労働者とその家族が転⼊し、貧困や差別などの問題が集積する場となった>
『バティモン5 望まれざる者』
5/24(⾦) 新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町他全国公開
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