- 2024-6-4
- ENTERTAINMENT
- フィリップ
第2次大戦、ナチス支配下のポーランド、そしてドイツ。ユダヤ人としての素性を隠して生きている美青年フィリップが、復讐、愛、死、孤独、そして時代に翻弄されながら、もがき生きていくー。
1961年にポーランドで発刊後、その内容の過激さから、すぐ発禁処分に。やがて、60年の時を経た2022年にようやくオリジナル版が出版。ポーランド人作家レオポルド・ティルマンド実体験に基づく自伝的小説『Filip』(※日本未刊行)をもとに描かれた映画『フィリップ』(6/21<金>)より、うちからほとばしる情熱を持て余すフィリップが、その熱を発散するかのように肉体を鍛錬する本編特別映像が解禁となった。
1941年、ワルシャワのゲットーで暮らすポーランド系ユダヤ人フィリップ(エリック・クルム・ジュニア)は、恋人サラとゲットーで開催された舞台でナチスによる銃撃に遭い、サラや家族、親戚を目の前で殺されてしまう。2年後、フィリップはフランクフルトにある高級ホテルのレストランでウェイターとして働いていた。自身をフランス人と偽り、戦場に夫を送り出し孤独にしているナチス将校の妻たちを次々と誘惑することでナチスへの復讐を果たしていたが、孤独と嘘で塗り固めた生活の中、やがて、プールサイドで知的な美しいドイツ人のリザ(カロリーネ・ハルティヒ)と出会い、愛し合うようになる。だが戦争は容赦なく二人の間を引き裂いていく…
「行動したい、ただ生きてるのはご免だ」―映像は、うちからほとばしる情熱を持て余すフィリップが、その熱を発散するかのように肉体を鍛錬する様子を捉えたもの。ユダヤ人であることを隠し、ホテルのウェイターとして働くフィリップ。同じくユダヤ人であることを隠しながら同居する友人は「食うのに困ってもいないのに何が不満なんだ」「ここはアウシュビッツよりましだ」とフィリップをたしなめるが、その言葉はフィリップには届かない。
孤独で優雅、そして逞しい美青年フィリップを演じるため、ダンスやボクシングを学びながら体重を10キロ増!1年かけて見事に鍛えあげたエリック・クルム・ジュニアの肉体美も必見です。 恋人や家族をナチスによる理不尽な暴力で失ったフィリップ。孤独を癒すために手段を選ばない彼の人物像について監督は「彼の冷酷でシニカルで反社会な行動が人の嫌悪感を呼ぶように見えるかもしれません。しかしそれはすべて壊れやすく繊細な性格を隠すための仮面です」「フィリップは自分の内なる悪魔を克服するために、他の方法で行動することはできません。現代だったらフィリップはおそらく心理療法士の下に通い詰めているでしょう」と分析。
そして「この映画は戦争映画ではありません。トラウマに苦しむ孤独で疎外された男性についての映画です」と断言。「フィリップは建築家になる夢がありましたが、戦争の運命によって、ホテルのウエイターになりました。この点において彼は現代のウクライナやシリア、パレスチナ、アフガニスタンからの難民の境遇と共通していると言えます。第二次大戦はこの映画の時代設定や舞台装置にすぎません。本当に重要なのは、主人公を悩ませる精神的・道徳的問題であり、それが物語の時代設定に関係なく普遍的なものになることです」と、第二世界大戦を舞台にした映画を、戦後80年近く経った今、新たに紡ぎ上げる意義を明かした。
ポーランドの作家レオポルド・ティルマンド(1920-1985)の自伝的小説としてポーランド当局の検閲の後大幅に削除されたものが1961年に出版された小説<Filip>。ティルマンド自身が1942年にフランクフルトに滞在していた実体験に基づいて書かれたこの小説、発刊後すぐに発禁処分。長い間陽の目を見ることがなかったが、2022年になってオリジナル版が出版された。
監督は1990年代よりテレビプロデューサー兼演出家としてキャリアを重ね、21世紀に入って以降はポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督作品のプロデューサーとして、後期代表作である『カティンの森』、『ワレサ 連帯の男』、そして遺作『残像』まで製作を勤め上げた、ミハウ・クフィェチンスキ。
その事実から導き出す魂の解放・自由奔放な姿を第2次大戦、ナチス支配下のドイツを舞台に官能的な要素を加えて本作を映画化、その大きな理由のひとつとして「ポーランドで愛する人を亡くしたユダヤ人の主人公は、そのような状況下で何を感じるでしょうか? 私はティルマンドの本を心理的で緻密な映画にし、トラウマから感情が凍り付いた男の孤独を研究することに決めました」と明かしている。 2024年、美しく官能的で、そして逞しく生きるフィリップが私たちの心を強く心を揺さぶり、生きていく力を与えてくれる映画『フィリップ』が公開される。
『フィリップ』
6/21(金) 新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、
アップリンク吉祥寺ほか全国公開
ほか全国順次ロードショー
(C)TELEWIZJA POLSKA S.A. AKSON STUDIO SP. Z.O.O. 2022